決議文・意見書・会長声明

司法試験合格者数のさらなる減員を求める13弁護士会会長共同声明

2019.02.07

  1.  日本弁護士連合会は、2016年3月の臨時総会決議において、現行の法曹養成制度の下で、法曹志望者が毎年大幅な減少を続けており、こうした状況が続くならば我が国の司法と民主主義を担う人的基盤を脅かす危険があるとし、2015年度司法試験合格者数が1850人であった状況の中で、「まず、司法試験合格者数を早期に年間1500人とすること」を、可及的速やかに実現すべき緊急の課題として、全国の会員・弁護士会と力を合わせて取り組むことを表明した。
  2.  新制度発足後、現実の法的需要を大幅に超える司法修習終了者が毎年供給されてきた。加えて、裁判所における民事訴訟事件の新受件数がピーク時に比べて大幅に減少するなど法曹に対する従来型の需要は供給との関係で増加するどころか減少を続け、新しい活動領域の拡充も、供給の増加を吸収する規模には至っていないため、弁護士の過剰供給の弊害は解消されるに至っていない。司法試験に合格し、司法修習を終了した時点での12月の一括登録時に登録しない終了者数は減少してきたものの、勤務弁護士の待遇面の低下、既存の事務所に籍を置かせてもらうだけの形態や、登録後間もなく独立する形態も見られ、法曹の職業としての魅力の低下は今なお続いている。
     それに伴い、2018年の法科大学院入学者数は1621人と前年に比べ83人減少し、志願者数の回復の兆しはなく、低迷した状態にある。司法試験受験者数は、2004年には4万3千人であったものが、2017年は5967人となり、さらに2018年は5238人にまで減少した。
  3.  政府の法曹養成制度検討会議は、2013年6月26日の取りまとめにおいて、「多様で有為な人材を法曹に確保することが困難となる危機に直面していることは否定できない」とし、新たな検討体制に法曹養成制度の速やかな検討を求めたが、法科大学院制度に対する改革については、昨年3月に中央教育審議会法科大学院等特別委員会から基本的な方向性が示されただけで、具体的な改善策は今後の課題として先送りされた。法曹養成制度の改革は未だ途上にあり、法曹の職業としての魅力は回復せず、法曹志望者の回復にはほど遠い状況にある。
  4.  こうした中、法務省は、昨年9月に、2018年の司法試験合格者数を1525人と発表した。2017年と比べ、合格者数が1543人から18名減少したとはいえ、受験者数が5967人から5238人へと729人減少したにもかかわらず、合格率は25.86%から29.11%へとかえって上昇している。
     法曹養成制度改革推進会議が2015年6月30日付け取りまとめにおいて、「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものではないことに留意する必要がある」と指摘したにもかかわらず、こうした状況は、質の確保よりも合格者数の確保を優先したものではないかと危惧せざるを得ない。
  5.  法曹は司法を担う人的基盤であって、司法制度は法の支配と人権擁護の基盤となる国家制度である。今、供給過剰状態を解消し、法曹の職業としての魅力を回復し、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの機会を十分に確保するなどして法曹の質を保持することは、司法制度存立の基礎を維持するために必要不可欠な事柄である。
     そこで、われわれは、共同で、政府に対し、さらに司法試験合格者数を減員する方針を、速やかに採用することを強く求めるものである。
  6. 以 上

    2019年(平成31年)2月5日

    埼玉弁護士会  会 長  島  田  浩  孝

    千葉県弁護士会 会 長  拝  師  徳  彦

    栃木県弁護士会 会 長  増  子  孝  徳

    山梨県弁護士会 会 長  甲  光  俊  一

    長野県弁護士会 会 長  金  子     肇

    兵庫県弁護士会 会 長  藤  掛  伸  之

    富山県弁護士会 会 長  橋 爪  健 一 郎

    山口県弁護士会 会 長  白  石  資  朗

    大分県弁護士会 会 長  石  井  久  子

    仙台弁護士会  会 長  及  川  雄  介

    山形県弁護士会 会 長  安 孫 子  俊 彦

    秋田弁護士会  会 長  赤   坂    薫

    札幌弁護士会  会 長  八  木  宏  樹