決議文・意見書・会長声明

死刑執行に対する会長声明

2018.08.31

2018年7月6日、東京拘置所において3名、大阪拘置所において2名、広島拘置所において1名及び福岡拘置所において1名、合計7名の死刑が執行された。これに引き続き、同月26日、東京拘置所において3名、名古屋拘置所において2名、仙台拘置所において1名、合計6名の死刑が執行された。この2回にわたる死刑執行により、上川陽子法務大臣の就任以降では合計3回、第二次安倍内閣以降では合計34名の死刑が執行されたこととなる。

今回の2回にわたる死刑執行では、それぞれ7名又は6名もの多数者に対する死刑執行が同日中になされているだけでなく、うち10名が再審請求中であり、心神喪失の疑いがある者も含まれている。

再審請求中の死刑執行については、国際連合の自由権規約委員会が、日本の第6回定期報告に対する最終見解で、日本の死刑制度に関して、再審請求に死刑の執行停止効がないことなどの問題点があると指摘していた。

また、心神喪失の疑いのある者に対する死刑執行については、刑事訴訟法上、死刑の言い渡しを受けた者が心神喪失の状態にあるときには刑の執行が停止される必要があり(同法479条)、今回の死刑執行は同規定に違反した可能性がある。

このように、今回の死刑執行は、被執行者数の多さの点で異例であるだけでなく、再審請求中の者に対する執行である点や心神喪失の疑いのある者に対する執行である点で大きな問題を抱えるものである。

死刑廃止は、国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止し、又は停止している国は142か国に上っており、実に全世界の3分の2以上の国において死刑の執行がなされていないという状況である。これまで、国連の自由権規約委員会も政府に対して、たびたび死刑廃止を前向きに検討すべきと勧告をしていた。

当会においても、2008年2月27日、2016年1月27日及び同年5月26日に、死刑執行に関する会長声明を発表し、政府に対し、死刑執行を停止した上で、死刑制度の存廃についての国民的議論を深めるために、死刑に関する情報を広く国民に公開するよう要請していた。

また、日本弁護士連合会は、2016年10月7日、第59回人権擁護大会において、「死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることなどを政府に対して求めていた。

ところが、政府は、このような勧告、宣言及び声明などを無視して、今回のごとき異例かつ問題を抱える死刑執行に及んだのであり、極めて遺憾である。

当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、再度、死刑執行を停止した上で、死刑制度の存廃についての国民的議論を深めるために死刑に関する情報を広く国民に公開することを政府に対して求める。

 

2018年8月30日

富山県弁護士会 会長  橋 爪 健一郎