決議文・意見書・会長声明

改正金融商品取引法施行令に商品先物取引に関する市場デリバティブを加え、 商品先物取引についての不招請勧誘禁止を維持することを求める会長声明

2013.11.27

証券・金融、商品を横断的に一括して取り扱う総合取引所の実現のため、商品先物取引などの商品に係るデリバティブ取引を金融商品取引所において取り扱えることとし、当該商品を「金融商品」と位置づける金融商品取引法の改正法が2012(平成24)年9月に成立した。そして、本年6月19日、寺田内閣府副大臣が、衆議院経済産業委員会において、「市場取引ルールについても、やはり、特に不招請勧誘のところ、これは規制改革会議でも指摘がありまして、今現在、商品取引の方はこの規制がかかっている、禁止になっている状態であります。したがって、これを金融と同様に不招請勧誘の禁止を解除して、取引所取引については行えるようにする、そのような方向で推進をしてまいりたいと思います。」との答弁を行った。これは、総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有することとなった金融庁が、総合取引所に関する法規制について、不招請勧誘禁止規制を設けない方向での検討を進めていることを示すものである。

しかし、このような動きは、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制が導入された経緯を軽視し、かつ、昨年8月に産業構造審議会商品先物取引分科会が取りまとめた報告書の内容にも反するものであり、到底見過ごすことができないものである。

そもそも、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制は、商品先物取引業者が、不意打ち的な勧誘や執拗な勧誘により、顧客の本来の意図に反した取引に引き込み、多くの被害を生んできたという歴史的事実を踏まえ、消費者関係団体等の長年にわたる強い要望が積み重ねられた結果、2009(平成21)年の商品取引所法改正により、ようやく実現したものである。そして、2012(平成24)年2月から6月にかけて開催された産業構造審議会商品先物取引分科会において、不招請勧誘禁止規制を見直すべきとの意見が出されたものの、同分科会が取りまとめた同年8月21日付けの報告書では、「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず、これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため、引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである。その上で、将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である。」と述べられ、商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制を維持することが確認されていたところである。

それにもかかわらず、不招請勧誘禁止規制の施行からわずか2年余りで、上記分科会報告書が指摘する実態の検証もなされないまま、不招請勧誘禁止規制を撤廃することは極めて不当である。

総合的取引所構想実現のための改正金融商品取引法の施行が2014(平成26)年3月と迫っている中、金融庁は、現在、施行令等の改正作業に取り組んでいるが、現行の施行令では、店頭デリバティブ取引のみが不招請勧誘禁止規制の対象に指定され、市場デリバティブ取引は対象外であることから、今回の施行令の改正において、国内の商品先物取引を不招請勧誘禁止規制の対象取引に加えなければ、総合取引所に上場する商品先物取引においては、不招請勧誘禁止規制が適用されなくなってしまう。

よって、当会は、消費者保護の観点から、改正金融商品取引法施行令における不招請勧誘禁止の対象となる取引に商品先物取引に関する市場デリバティブを加え、総合取引所において取り扱う商品先物取引についても不招請勧誘禁止規制を維持するよう強く求める。

2013(平成25)年11月27日

富山県弁護士会   会 長   藤 井 輝 明