決議文・意見書・会長声明

組織犯罪処罰法の改定(いわゆる共謀罪の新設)に反対する声明

2017.03.24

政府は3月21日、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)の改定法案を国会に上程し、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪の遂行の計画」を処罰するものとしていわゆる共謀罪を新設しようとしている。報道によれば、この改定法案が成立した場合に新設される共謀罪は277に上るという。

共謀罪法案は、過去に3度国会に上程されたが、広範な世論の反対により3度とも廃案となったものである。

政府は、我が国が締結しているいわゆる国際組織犯罪防止条約を批准するためには共謀罪新設が必要不可欠であり、また、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックでのテロを防止する対策として共謀罪が必要だと説明している。しかし、国際組織犯罪防止条約は本来、組織的経済犯罪の防止を主旨とするものであってテロ対策を目的とするものではなく、この条約を批准する上で共謀罪が必要不可欠ではないことは、過去の共謀罪法案の審議の中で明らかになっている。また、我が国は国連のテロ関連条約の全てに加盟し、テロ対策に必要な国内法整備を既に終えているうえ、殺人予備罪や凶器準備集合罪等々により重大な犯罪について未遂以前の段階から処罰できる体制を整えているのであり、テロ対策目的での共謀罪新設の立法事実は認め難い。

さらに政府は、処罰対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に限定し、また、犯罪遂行の計画に加えて実行準備行為が要件になっているとして、過去の共謀罪法案とは異なるとしきりに強調する。しかし、正当な活動を行っていた団体も結合の目的が犯罪を実行する団体に一変したと認められる場合は「組織的犯罪集団」に該当するものとされるが、そうした一変があったか否かはひとえに捜査機関の判断にかかっている。また、実行準備行為の要件にしても、資金の手配や下見等々、危険性の乏しい中立的な行為であっても「準備行為」と判断される。したがって、処罰対象を絞り、あるいは捜査機関の権限濫用を防止するために要件が加重されたとは到底言えず、過去の共謀罪法案とその本質は何ら変わっていない。

そもそも我が国の刑事法の体系は、法益侵害に向けられた具体的な危険性がある行為を処罰することを原則としており、未遂犯の処罰は例外であり、より前段階である予備罪や陰謀・共謀罪は重大な犯罪について極めて例外的に処罰することとしている。これは、かつて行われた国家の恣意的な刑罰権行使による人権侵害を排除し、刑事法の人権保障機能を十全に果たすための基本原則である。今般政府が新設しようとする共謀罪は、この基本原則を根底から覆すものである。

共謀罪法案が成立したときには、捜査機関は、団体・組織の日常活動をいわば大手を振って査察できることになろう。共謀罪の立件にはどんな計画・目的を持っていたか内心の探求が必須であるから、「自白」の強要や盗聴捜査が横行し、スパイ潜入捜査等も行われ、プライバシー侵害と監視の中で市民の自由な活動が萎縮することは必定である。

そして、共謀罪は、その成立要件がきわめて曖昧であるため、捜査機関の恣意的な解釈・運用を許すものとならざるを得ない。捜査機関が摘発したい団体・組織を狙い撃ちし、共謀罪を口実に構成員を逮捕・捜索することによってその団体・組織にダメージを与えて活動を阻害し、その結果、結社の自由、表現の自由はもとより、思想信条の自由という内心の自由をも侵害することが強く懸念される。戦前、この共謀罪とまさに本質を同じくする治安維持法のいわゆる目的遂行罪が濫用され、当県では世に「泊事件」と呼ばれる冤罪事件が生まれたことを決して忘れてはならない。

よって、当会は、今般政府が行おうとしている組織犯罪処罰法の改定(いわゆる共謀罪の新設)に強く反対し、国会がこの法案を速やかに廃案にするよう求めるものである。

 

2017(平成29)年3月23日

富山県弁護士会 会長  山  本  一  三