北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

増資に伴い社外取締役は必要?-上場すると設置は義務

2022.05.14

北日本新聞掲載 2022年5月14日

執筆者:今村 元弁護士

私は社長をしています。業務の拡大に伴い外部から資金を調達するため、増資をしようと考えており、そのために株式の譲渡制限を外すことが必要になります。増資で資本金が5億円を超えることもあって、出資予定者から監査役会の設置を求められています。また、資本金の額など条件によって、社外取締役を置くことが義務づけられると聞きましたが、どういう場合に必要なのでしょうか。

2019年に一部改正された会社法が今年9月1日から施行されます。重要な改正点として、株主総会資料の電子提供制度、株主提案権に基づく提案を議案の要領に記載する場合の上限数の導入、取締役の報酬決定方針についての規制、社外取締役の設置義務などがあります。

今回の改正会社法が社外取締役の設置を義務づける要件は①公開会社であること②大会社である監査役会設置会社のうち、発行する株式の有価証券報告書の提出義務を負う会社であること-となります。

①の公開会社とは、株式の譲渡制限のない会社です。②の「大会社である監査役会設置会社」と「有価証券報告書の提出義務」は分かりにくいと思います。大会社というのは、資本金が5億円以上か、負債の部の額が200億円以上の会社です。監査役会設置会社とは、3人以上の監査役が監査役会を構成していることを指します。

有価証券報告書の提出義務は、上場会社は当然にありますが、非上場会社でも、株主の数が千人以上になると発生します(金融商品取引法24条2号、同法施行令3条の6第4項)。

貴社の場合、これまでは株式の譲渡制限があったので、株主数が千人以上ではないと思いますが、投資家からの要請に応じて株式を上場すると、有価証券報告書の提出義務が発生し、社外取締役の設置義務も生じます。それを放置してしまうと、取締役の善管注意義務違反が問われることもあり得るので、忘れないようにしてください。

また、ご質問の件は、貴社の企業統治に深く関わっている問題ですので、弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。