北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

ファイル共有ソフト利用突き止められた-著作権侵害の可能性

2021.12.13

北日本新聞掲載 2021年12月11日

執筆者:春山然浩弁護士

ファイル共有ソフトを利用して、人気漫画をダウンロードして楽しんでいたら、漫画の作者から住所・氏名の開示請求が出ていると、プロバイダーから連絡が届きました。

ファイル共有ソフト(ファイル交換ソフト)の利用について、プロバイダーから住所・氏名の開示請求の連絡が来たという相談が、県内でもしばしばあります。このソフトで漫画やアニメなどをアップロードすることのみならず、自分で楽しむためにダウンロードすることも著作権侵害に当たります。アップロードもダウンロードもしなくても、ファイル共有ソフトを使うだけで、他者間のファイル送信の中継点にされ、著作権侵害の手助けをしてしまうこともあります。著作権侵害は損害賠償だけでなく、刑事罰の対象でもあります。ファイル共有ソフトでの作品のダウンロードはもちろん、ソフトの利用も控えるべきです。

作者は、自分の作品が違法にインターネット上に流通していることが分かっても、誰が流通させているかは分かりません。そこで、プロバイダーに対して住所・氏名の開示請求をすることがあります。請求を受けたプロバイダーは、契約者に開示についての意見を照会しなければなりません。あなたが受けた連絡は、この意見照会のことと思われます。開示に応じないと回答してもよいのですが、著作権侵害が事実であれば、開示訴訟をされればいずれ住所・氏名は作者に開示されます。このため、作者に裁判費用をかけさせ無駄に損害を与えないため、初めから開示に同意した方がよいでしょう。

開示後に、作者から損害賠償を請求されることもあり得ます。ただ、その中身はよく吟味する必要があります。例えば作品の売価にダウンロード数を掛けた額だと、そこには経費分も含まれます。作者に実際に生じた損失よりも大きいと思われ、損害額はもっと小さいのだとの主張が考えられます。

プロバイダーからの意見照会や作者からの請求書が届いて対応方法が分からない場合は、すぐに弁護士にご相談下さい。また、作品は作者ほか多くの人が関わってできたものです。ファイル共有ソフトなど違法な手段ではなく、適正な対価を支払って利用するようにしましょう。