北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

遺言書のない遺産分割-相続人で協議し手続き

2018.09.08

北日本新聞掲載 2018年9月8日

執筆者:青島明生弁護士

先日、父親が亡くなりました。多くはありませんが、自宅不動産、預貯金、有価証券などの遺産があります。未払の公共料金などもあるようです。家族は母親と私たち兄弟2人です。法律で遺産を分割する割合が決まっていると聞いたことがありますが、そのまま分けられるのでしょうか。遺言書はありませんでした。

あなたが言われる通り、法律で相続人が受け取る遺産の割合は決められています。亡くなられたお父さんの配偶者であるお母さんと、子であるあなたたち兄弟2人が相続人の場合、お母さんが2分の1、あなたたち兄弟が各4分1の割合で取得することになります。これを法定相続分と言います。

しかし、あなたに4分の1の権利があるからといって、あなた一人で預貯金の4分の1を引き下ろすことはできません。遺産分割という手続が必要です。遺産分割とは、①残っている遺産を評価し(負債は差し引く)②法定相続分の割合の具体的な価額を算出③それに相応する遺産のどれを誰が取得するかを決める-ことです。なお、負債がある場合、誰がそれを支払うかも決めます。

従って、誰かが不動産を、他の誰かが預貯金を、もう1人が有価証券を取得する、ということもあるので、自動的に預貯金の4分の1があなたのものになるということはないのです。

また、相続人の間で誰がどの財産をどれだけ取得するかということが話し合いで決まったとしても、それを実行する手続が必要です。まず、決まった内容を「遺産分割協議書」という書類にまとめ、各自で押印しましょう。なお,その後の手続のためには、全員が実印を押したものである必要があります。

そして、この遺産分割協議書を使って、不動産なら法務局で登記、預貯金なら金融機関で払い戻し、有価証券なら証券会社で名義変更の手続をする必要があります。それぞれに、必要な書式、書類が決まっていますので用意しなければなりません。