北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

モラハラで離婚できるか-状況や程度により可能

2019.05.11

北日本新聞掲載 2019年5月11日

執筆者:南果弁護士

結婚して3年目の専業主婦。夫は1歳になる息子のことですぐ「お前の育て方が悪い」と責めたり,「誰の給料で暮らしていけると思っているのか」といった発言をします。機嫌が悪いと,わざと大きくため息をつき,舌打ちすることもあります。このような言動で精神的に追い込まれていたところ,モラハラという言葉を知り,夫に当てはまると思いました。それ以来,離婚を考えているのですが,モラハラは理由になりますか。

最近,テレビやインターネットで「モラハラ」「モラルハラスメント」という言葉をよく見掛けるようになりました。法律上,正式な定義はありませんが,一般的には,肉体的な苦痛ではなく,言葉や態度により,相手に対して過度に精神的なストレスを与えることを言います。

人格を否定するようなモラハラを受け,一定期間別居せざるを得ない状況になった場合,夫婦関係が修復できないとして離婚が認められることもあります。慰謝料も併せて認めてもらえる可能性があります。

もっとも,ご質問の内容のような夫の言動だけでは,婚姻関係が修復できないほど破綻しているとまでは言いがたく,これだけを理由としても,裁判で離婚が認められない可能性が相当程度あります。ただ,裁判が長引くにつれ別居期間も長期化し,婚姻関係が破綻したと認められる場合もありますので,ただちに諦める必要はないと思います。

現状はこの通りですが,裁判でどのようなケースに離婚を認めるかの解釈は,時代とともに変わります。モラハラも,今後は離婚の原因として重要視されることが十分考えられます。

モラハラの場合,当事者だけでの話し合いは難しい状況にあります。法律上の手続きを取るのであれば,まずは家庭裁判所で調停を申し立て,その手続きの中で話し合いを進めることになります。

調停は,あくまでも話し合いによる解決を目的とします。必ずしも法律上の離婚原因がなくても,利用できるという利点があります。離婚の合意まで至らなかったとしても,調停の中で相手のモラハラの言動を主張すること自体が,後の裁判でモラハラの証拠となることがありますし,相手にモラハラの改善を約束してもらう機会になることもあります。

モラハラでストレスをため込んだ結果,うつ病などの発症につながる危険もあります。そのような事態に陥る前に,まずは弁護士に相談してください。その際は,どのような言動があったのか,具体的な言葉や行動を説明できるようにしておくとスムーズです。