北日本新聞掲載『くらしの法律Q&A』

高齢の親の財産を管理するには-元気なうちに家族信託

2021.04.10

北日本新聞掲載 2021年4月10日

執筆者:草野友里恵弁護士

Q:82歳の父は物忘れがあります。もし認知症になって成年後見制度を利用すると、裁判所が選ぶ後見人が財産を管理すると聞きました。現在、父名義の土地に開発の計画があり、自分たちで管理できなくなると困ります。

A:成年後見は、判断能力のない本人に代わって、裁判所の監督を受けながら、後見人が財産管理などを行う制度です。本人の財産保護のため、土地売却など重大な財産処分をするときは慎重な検討を要し、自宅不動産については裁判所の許可が必要です。もし、本人が積極的な資産運用を希望している場合は、家族信託をすることが考えられます。

家族信託とは、今回の例で言えば、財産の所有者であるお父様(委託者)が、信頼できる家族(受託者)と信託契約を結び、預貯金や不動産などを任せるというものです。任せた財産の所有者は委託者(お父様)から受託者(家族)へと変更されます。受託者は、信託契約に則って財産を適正に管理・運用して、運用の利益を委託者が指定した「受益者」に渡します。

受益者は、受託者でも委託者でも、第三者でも構いません。途中で変更するよう定めることもできます。今回の例で言えば「父の生存中は父本人、死後は母」などです。また任せる財産も自由に選択できます。

家族信託は、裁判所を介さずに行います。委託者と受託者が信託契約を結ぶことで成立します。一旦契約を結べば、委託者が認知症になっても継続できます。

ご相談の件ですと、現在の開発の計画を実現できるよう、お父様が元気なうちにお子様などと信託契約を結び、土地の管理を今のうちから任せてしまうことが考えられます。土地はお父様の名義ではなくなるので、成年後見が開始しても、土地は影響を受けません。

一方で家族信託には注意点もあります。例えば、成年後見のように裁判所が監督してくれるわけではないため、適切に財産を管理できる受託者を確保できるかという問題があります。

成年後見のように身上監護に関する事務(入院手続など)はできないので、成年後見との併用が必要な場合もあります。課税関係も複雑です。家族信託をする場合は、弁護士や税理士など専門家に相談された方が良いでしょう。