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公判前整理手続マニュアル

Q9−1 弁護側から証人調べの請求をしたら、検察官から「供述内容要旨記載書面」を出してくださいと要求されました。どう対応したらよいですか。

1 法律の規定
 供述内容要旨記載書面は、検察官請求証拠の開示(法316の14②)と弁護人請求証拠の開示(法316の18②)に関して、それぞれ規定があります*1
 いずれも、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の請求をした場合に、氏名・住所を知る機会を与え、かつ「その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあっては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面」の閲覧・謄写の機会を与えることとされています。
  上記下線部が「供述内容要旨記載書面」のことです。
 2 供述内容要旨記載書面を開示する趣旨
 たとえば、弁護人が、証人を請求した場合、検察官は、立証趣旨や尋問事項以上に、供述内容を予想することができず、反対尋問を含む弾劾の準備を有効に行うことができないでしょう。供述内容要旨記載書面は、証人を請求された相手方に防御の準備を行わせるためのものです。
 3 供述内容要旨記載書面の具体的な内容・書き方
 供述内容要旨記載書面には、証人等が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を書くものとされています。通常は、弁護人が当該証人によって証明したい事実を、証人の一人称による供述の体裁で記載すればよいでしょう。検察官から類型証拠として開示された証拠の中に、証人等予定者の供述調書があったり、被告人側が独自に供述録取書等を有している場合は、これらを検察官に示せばいいと思われますが、むしろ稀と思われます。どの程度の内容の供述内容要旨を書くかは、事案の内容(アナザーストーリーが描ける事案なのかどうか)、証言内容がどの程度予測できるか等により異なってくると思われますので、慎重に記載すべきと思います。
 実際は、弁護側の予定主張との関係で、証人の立証趣旨を明確にした事項を記載しますが、民事の陳述書のように詳しくなくても、ある程度簡潔なもので(箇条書でもよいようです)、かつ、抽象的な記載でも足ります。
 但、事実関係に関する証人と情状に関する証人とでは、記載の仕方が異なってくると考えられ、後者の場合はある程度具体的な方が証人採用との関係では不必要とされにくく、ベターと考えられます。