会員専用ページ

公判前整理手続マニュアル

1.5号ロ書面の重要性判断(大阪高裁平成18年6月26日決定)

(1) 論点の所在
 法第316条の15第1項の類型に基づく証拠開示請求をする場合においても、「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて…被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度…を考慮し、相当」(同項柱書)と認められる必要があるとされています。かかる重要性や必要性については被告人側に主張・立証責任があるとされていますが、類型に該当する場合にはその開示を求める証拠の重要性や必要性があるものと一般的に考えられています。
 特に類型5号ロについては、検察官の証人請求予定者の供述調書であり、反対尋問を適切に行う上で必要であり、その証拠の開示の重要性が高いものと考えられます。
 もっとも、この理が類型5号ロに該当すれば、供述調書の内容がどの様な場合であっても開示請求が認められるのか、重要性や必要性の認められない場合もあるのではないか、が問題となります。

(2) 事案説明とコメント
 本決定の事案は、被告人側が同項5号ロの類型に該当する証人予定者13名の証拠開示請求をしたところ、検察官が公判廷において証言が予想される事項とは関連性を有しない事項についての供述調書であるとして開示に応じなかったため裁定請求がなされ、その請求を却下した原審裁定に対して即時抗告したというものです。
 本決定は、被告人側がなした類型5号ロに基づく請求に対し、「検察官が取調を請求している同供述社の供述調書の証明力を判断する上で重要な証拠とは認められない」として、裁定請求を却下した原審を維持しました。
 上記のとおり、5号ロの類型に該当する証拠は原則として必要性、重要性を有するものと解されています。弁護人の開示請求に対して、検察官が類型に該当する証拠の存在を認めながら、法316条の15柱書の要件に該当しないとの回答がされた場合、同項号の類型及び要件に該当するか否かが一次的には検察官の判断に委ねられるとしても、それに留まってはいけません。弁護人としては、当該証拠と証人請求予定者の予想される証言との関連性の有無、防御のための開示の必要性、証拠開示の重要性については、証拠の開示を受けていない以上不明ですから、不開示と判断した具体的理由について釈明を求めた上で、被告人側において必要性・重要性を検討した上で、裁定請求の是非を決することになるでしょう。

(3) 参考
 大阪高裁平成18年6月26日決定:判例時報1940号164頁